2008-03-17 [Mon]
※映画版SSです。
俺は、何処で何を間違えたのだろう。
どれほど竜崎が疑ったとしても、頑なまでに信じてきた。
息子の、月の潔白。
――月、18の誕生日に贈る。
『これは人類が築き上げてきた、正義を成すためのルールブックだ』
『ありがとう父さん、僕も正義を勉強して行きたい』
幸子や粧裕が言うように、誰よりも何よりも自慢の息子だった。
…それが、
自分が命を賭けて追ってきた大量殺人犯・キラだった。
モニター越しに崩れ落ちる影。
センサーが竜崎の仮の死を伝える。
そして……
「お父様の名前じゃない!」
そうか。
俺を、殺すのか。
ここに来て死ぬことなど怖くはない。
むしろ、俺が死んで自分の過ちに気が付いてくれるなら、キラの暴走が止まるなら、それでも構わない。
だが、そのノートで俺を殺すことは不可能だった。
月、確かにこの世は矛盾だらけだ。
しかし法を捨ててしまったら、秩序も失われてしまう。
その矛盾を埋めていくのが、それを生み出さないようにするのが俺達の務めなんだ。
どんな力を持ったとしても、人間は人間。
神になどなれはしない。
お前の思い上がった独裁世界など許すわけにはいかない。
「キラは正義なんだ…分かってくれよ…」
最期の言葉すら、受け入れることは出来ず、
「馬鹿野郎…月の馬鹿野郎…」
事切れたお前を抱きしめることしかできなかった。
キラの死は公表されることなく、月はキラに殺されたということになった。
そう、月はキラという己の中の悪魔に取り殺されてしまったのだ。
そうして、もう一人を見送る時間が近づいていた。
彼は独りでチョコをかじりながらチェスをしていた。
自分の死を前に、驚くほど静かに。
人の命同様、自分の命にも執着がないのか。
「竜崎。何と言ったらいいか…すまん」
「謝らなければいけないのは、私です多くの犠牲を出し…月くんも救えずに」
………!!
この状況において、自分の死より、月の事を?
竜崎、お前は…
ゲームだなどと言って
本当は 誰よりも
月を 人間を
守りたかったのか…?
「…竜崎、俺は君と戦えた事を誇りに思う」
今更こんな言葉、何の慰めにもならない。
それでも。
伝えずにはいられなかった。
瞬間、彼の黒曜石のような瞳が揺らいだ。
「…私は、親というものを知りませんでも…夜神さんあなたは、立派な父親だと、感じました」
そう言って見上げる彼は、名探偵Lではなく、ただ、ひとりの子供だった。
「さようなら、夜神さん…ありがとうございます」
そうして、今までに見たことがない、優しく哀しいまでの微笑みを残し、安らかな眠りに就いた。
先に逝った老紳士が迎えに来てくれることを祈りつつ。
「キラがいなくなってから、やっぱり犯罪増えたよね」
季節は巡り、人間のどうしようもない愚かさを思い知らされる。
しかし『キラが現れる前に戻った』で、あってはいけないのだ。
それでは何ひとつ変わっていない。
あの日々が、彼等が、何もなかったことになってしまう。
何が正義か、何が悪か。
繰り返す矛盾の中で、己に問いかけながら生きてゆく。
――俺達が、守り抜いたこの世界で。
20070618
俺は、何処で何を間違えたのだろう。
どれほど竜崎が疑ったとしても、頑なまでに信じてきた。
息子の、月の潔白。
――月、18の誕生日に贈る。
『これは人類が築き上げてきた、正義を成すためのルールブックだ』
『ありがとう父さん、僕も正義を勉強して行きたい』
幸子や粧裕が言うように、誰よりも何よりも自慢の息子だった。
…それが、
自分が命を賭けて追ってきた大量殺人犯・キラだった。
モニター越しに崩れ落ちる影。
センサーが竜崎の仮の死を伝える。
そして……
「お父様の名前じゃない!」
そうか。
俺を、殺すのか。
ここに来て死ぬことなど怖くはない。
むしろ、俺が死んで自分の過ちに気が付いてくれるなら、キラの暴走が止まるなら、それでも構わない。
だが、そのノートで俺を殺すことは不可能だった。
月、確かにこの世は矛盾だらけだ。
しかし法を捨ててしまったら、秩序も失われてしまう。
その矛盾を埋めていくのが、それを生み出さないようにするのが俺達の務めなんだ。
どんな力を持ったとしても、人間は人間。
神になどなれはしない。
お前の思い上がった独裁世界など許すわけにはいかない。
「キラは正義なんだ…分かってくれよ…」
最期の言葉すら、受け入れることは出来ず、
「馬鹿野郎…月の馬鹿野郎…」
事切れたお前を抱きしめることしかできなかった。
キラの死は公表されることなく、月はキラに殺されたということになった。
そう、月はキラという己の中の悪魔に取り殺されてしまったのだ。
そうして、もう一人を見送る時間が近づいていた。
彼は独りでチョコをかじりながらチェスをしていた。
自分の死を前に、驚くほど静かに。
人の命同様、自分の命にも執着がないのか。
「竜崎。何と言ったらいいか…すまん」
「謝らなければいけないのは、私です多くの犠牲を出し…月くんも救えずに」
………!!
この状況において、自分の死より、月の事を?
竜崎、お前は…
ゲームだなどと言って
本当は 誰よりも
月を 人間を
守りたかったのか…?
「…竜崎、俺は君と戦えた事を誇りに思う」
今更こんな言葉、何の慰めにもならない。
それでも。
伝えずにはいられなかった。
瞬間、彼の黒曜石のような瞳が揺らいだ。
「…私は、親というものを知りませんでも…夜神さんあなたは、立派な父親だと、感じました」
そう言って見上げる彼は、名探偵Lではなく、ただ、ひとりの子供だった。
「さようなら、夜神さん…ありがとうございます」
そうして、今までに見たことがない、優しく哀しいまでの微笑みを残し、安らかな眠りに就いた。
先に逝った老紳士が迎えに来てくれることを祈りつつ。
「キラがいなくなってから、やっぱり犯罪増えたよね」
季節は巡り、人間のどうしようもない愚かさを思い知らされる。
しかし『キラが現れる前に戻った』で、あってはいけないのだ。
それでは何ひとつ変わっていない。
あの日々が、彼等が、何もなかったことになってしまう。
何が正義か、何が悪か。
繰り返す矛盾の中で、己に問いかけながら生きてゆく。
――俺達が、守り抜いたこの世界で。
20070618
ご拝読ありがとうございました。
実はこれが初めて書いたデスノSSでした。
初めて書いたのが夜神パパン…(笑)。
いえ、鹿賀パパン大好きなんですよ!!後編でさくらTV突っ込むシーンなんて激萌え!!
以下、執筆時のあとがきより抜粋。
えぇと、パパンがデスノート持って本部に戻ってきた時の表情が、とても印象に残りまして。
どんな思いで監視映像を見てたんだろうとか、どんな思いで息子を「逮捕する」なんて言わなきゃならなかったんだろうかとか。
原作では「親殺しだけはしたくなかった」と、直接月が手を下すことはなかったんですが。
こないだアニメ版でパパンの死ぬシーン見て、しゃあしゃあと「死ぬなバカヤロー」なんて言う月が原作以上に憎く感じました(苦笑)。
映画の方は、原作ほど月が救いようのない奴になる前に終わりましたからね。
それでもムカつくっちゃあムカつきましたが(苦笑)。
あと、ここで書いたほどLは博愛主義ではないと思うんですがね。これは書いてて違和感あったので。
でも、松山くんが言ってたように、無意識ではそういう感情を知りたい、求めたい、求められたいっていうのは芽生えてたのではないかなと。
むしろ、もっと利己的で、自分がそうしたいからやってることが、結果事件を解決して、人々の為になってるというか。
逆に月は「世の中の為」とか言いながら結局独りよがり。対照的やなと気づきました。
実はこれが初めて書いたデスノSSでした。
初めて書いたのが夜神パパン…(笑)。
いえ、鹿賀パパン大好きなんですよ!!後編でさくらTV突っ込むシーンなんて激萌え!!
以下、執筆時のあとがきより抜粋。
えぇと、パパンがデスノート持って本部に戻ってきた時の表情が、とても印象に残りまして。
どんな思いで監視映像を見てたんだろうとか、どんな思いで息子を「逮捕する」なんて言わなきゃならなかったんだろうかとか。
原作では「親殺しだけはしたくなかった」と、直接月が手を下すことはなかったんですが。
こないだアニメ版でパパンの死ぬシーン見て、しゃあしゃあと「死ぬなバカヤロー」なんて言う月が原作以上に憎く感じました(苦笑)。
映画の方は、原作ほど月が救いようのない奴になる前に終わりましたからね。
それでもムカつくっちゃあムカつきましたが(苦笑)。
あと、ここで書いたほどLは博愛主義ではないと思うんですがね。これは書いてて違和感あったので。
でも、松山くんが言ってたように、無意識ではそういう感情を知りたい、求めたい、求められたいっていうのは芽生えてたのではないかなと。
むしろ、もっと利己的で、自分がそうしたいからやってることが、結果事件を解決して、人々の為になってるというか。
逆に月は「世の中の為」とか言いながら結局独りよがり。対照的やなと気づきました。
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